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「鉄道は公共サービス、料金収入にたよらず」 - 森口将之氏の記事から

交通評論家の森口将之っていうひとが東洋経済によせた記事だ。鉄道は公共サービスだっていう。料金収入にたよった民間的運営をおこなうべきもんじゃないっていう。ひごろのわがおもいを代弁してくれたようで、溜飲がさがった。以下に、かいつまんでほの記事を紹介しとく。原文のままとせず、わかりにくいカタカナ語なんかはブログ筆者でてきとうなにほんごに変換した。

「クルマ優先」からいちはやく転換したアメリカの大都市のいま

ポートランド路面電車広島電鉄の3倍

路面電車はまちづくりの手段

  • ポートランド国際空港に到着した筆者はまず、MAXライトレールと呼ばれる郊外区間電車のレッドラインに乗った。アメリカには他にもダラス、ミネアポリス、シアトルなど路面電車が国際空港に乗り入れる例がある。
  • 上下線が別々の道路をとおるわけ
    MAXライトレールは、しばらくは日本の通勤電車並みのスピードで疾走する。駅間も2分前后と路面電車として考えれば長い。ところが都心に近づくと急に速度を落とし、都心では道路上を走る。そして中心部を抜けると再び専用軌道になり、速度は上がり、駅間は長くなる。ヨーロッパのトラムトレイン、我が国の広島電鉄宮島線に近い。
  • ポートランドの都心は、碁盤の目のように道路が整然と走っているが、その間隔はアメリカの都市としては狭く、道路で囲まれた1ブロックが小さい。これを生かし、都心のにぎわいを取り戻そうと考え、通り沿いのビルは1階を商店のための空間とし、路面電車の上下線を違う道路に走らせることで、多くの通りが賑わうようにと考えたのだ。
  • ヨーロッパの多くの都市と同じように、ポートランド路面電車は走らせること自体が目的ではなく、まちづくりのための手段のひとつなのである。

都心への高速道路のりいれをやめて、ほのかねで公共交通を整備

  • 一方、郊外に出ると「〇〇のりつぎじょ」という駅名がいくつかあることに気づく。気になって車窓から外を見ると、バスターミナルが併設してあった。対面乗り換えできる駅さえある。ヨーロッパや日本でも実例はあるが、駅名にのりつぎじょと掲げているから分かりやすい。
  • 筆者が乗ったのは市内区間電車のBループで、しばらく都心を南に向けて走るが、まもなく街並みが途切れ、サウス・ウォーターフロントと名付けられたヰラメット川沿いの再開発地区に入る。オレゴン科学産業博物館を通り過ぎると、真新しい吊り橋を渡る。
  • ティリカム・クロッシングと名付けられたこの橋はループラインと同時に開通した。特筆したいのは、公共交通と歩行者、自転車だけが走れる「環境に優しい橋」であることだ。ここだけ見てもポートランドのまちづくりの方向性が分かろう。
  • 自由な気風がうんだ交通政策
    アメリカ50州の中で、太平洋に面したワシントン・オレゴン・カリフォルニアの3つの州は昔から自由な気風が強いことで知られている。昨年の大統領選挙では、いずれもドナルド・トランプ現大統領を擁した共和党は敗れている。オレゴン州最大の都市ポートランドもその気風を受け継いでおり、アメリカでいち早く自動車優先社会から公共交通重視の政策へと転換した。
  • 1969年には、それまでバラバラだったポートランド周辺の3つの郡の公共交通を一元化したトライメット(TRIMET・Tri-County Metropolitan Transportation District of Oregonの略)という公営組織が誕生した。1970年代の市長選挙では都心への高速道路乗り入れが争点となり、反対派候補が当選。その予算を公共交通整備に使った

路面電車やバスも道路交通のうち - 公共交通への税金の投入は当然
くろじ経営よりもよりよい公共サービスを

  • 北アメリカ・南アメリカの都市計画を専門とする知人の大学教授によれば、ポートランドでは路面電車やバスは道路交通とみなされるという。よって高速道路のための財源を公共交通整備に回すことができたそうだ。道路と公共交通が別の管轄になっている日本とは、都市交通に対する考え方そのものが大きく違うことが分かる。もうひとつ、公共交通の経営状況も日本とは大きく違う。
  • 筆者が乗った平日昼間に限って言えば、ポートランドの郊外区間電車や市内区間電車は空いている。これで採算が成り立つのか不安に思うほどだ。でも心配はいらない。日本の多くの公共交通とは経営の考え方そのものが異なるからだ。
  • トライメットの資料を見ると、2016年度の収入5.42億ドルのうち郊外区間電車、市内区間電車、バスなどの運賃収入は1.18億ドルとおよそ2割に留まり、税金収入が3.25億ドルと半分以上を占めていた。ちなみに支出は6.32億ドルとなっており、9,000万ドルの赤字となっている。
  • 交通の位置づけを「公共サービス」に
    日本の公共交通は、単一都市圏でも複数の事業者が存在するばあいが多く、運賃収入を主な財源としている。たとえば広島電鉄の2015年度の経営状況を見ると、63.69億円を稼ぐ鉄軌道部門は、そのうち59.09億円を旅客運輸収入が占めている。しかし営業費合計は66.96億円で、3.26億円の損失を出している。
  • ヨーロッパ・アメリカと日本の公共交通の大きな違いがここにある。ヨーロッパ・アメリカの公共交通は黒字経営を目指すこと以上に、より良い公共サービスを提供することを重視している。高令者や子供など、すべての人に等しく移動の便利さを提供するためだ。公立学校や図書館は税金で運用され、道路も税金で作られているわけだから違和感はない。逆になぜ日本の公共交通が民間企業的な運営を強いられているのか不思議に感じる。
  • 日本でも富山市などで、ヨーロッパ・アメリカ流の公共交通改革が導入されている。しかし財源の多くを運賃収入に頼っているために、人口減少に悩む多くの都市で公共交通の経営も苦しくなっており、交通改革が進まない
  • 公共交通は学校や道路と同じように公共サービスとして位置づけ、都市交通は単一事業者に統合し、まちづくりと連携して整備を進めていくべきだろう。JR北海道をはじめ、日本各地で公共交通の危機が叫ばれている今こそ、表面を変えることより、内側から生まれ変わらせることが重要だと、ポートランドを訪れて痛感した。

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(ねたもと)
「クルマ優先」からいちはやく転換したアメリカの大都市のいま - 交通評論家森口将之さん|ローカル線・公共交通|東洋経済オンライン|経済ニュースの新基準|2017年03月20日
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02 ポートランド郊外にあるのりかえじょ(森口将之さん) 03 ポートランドのティリカム・クロッシング橋(森口将之さん) 04 ポートランドの都心をはしる市内区間電車(森口将之さん)
(郊外にあるのりかえじょ)(ティリカム・クロッシング橋)(都心をはしる市内区間電車)
(3枚とも森口将之さんさつえい)