四国よ、新幹線なんかとんでもないぞ

在来線の改軌高速化こそがやるべきことだよ。新幹線なんか日常の鉄道交通を破壊するだけだ。ただ、改軌をするためには全国統一軌間が必要であり、この号令をかけるひとがみあたらんことが問題だ。

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四国の鉄道網 - 新幹線だのみは現実的か

徳島新聞 - 2019年10月29日)

  • JR四国の鉄道網維持の方策について、JR四国と四国4県などが話し合う懇談会は、新幹線整備を柱に据えた中間整理案をまとめた。
  • 四国に新幹線を整備する構想は現時点で熟していない。北海道、九州に開通した今、空白地域として、経済界や4県が中心になって必要性を訴えている段階だ。中間整理案は、その新幹線に四国の鉄道網の未来を託す形となった。
  • 新幹線は確かに、移動時間を大幅に短縮し、四国への人の流れを増やす有力な交通手段になり得る。「地方創生」の切り札として、四国だけでなく、奥羽、山陰、東九州など全国各地で新幹線実現を目指す動きが活発化している。
  • 魅力的存在ゆえ、すがりたくなる事情は理解できる。しかし、実現性が不透明な中で中間整理案の中心に置くのは危うさを伴う。仮に実現しなかった場合、四国の鉄道網は崩壊するしかないのかとの不安すら感じさせる。
  • 懇談会は、新幹線以外の取り組みとして▽駅を中心としたまちづくり▽一定の周期で列車を走らせるパターンダイヤの普及▽交通結節機能の強化▽バリアフリー化など利用環境の充実▽公共交通利用促進活動▽沿線でのイベント参加者への運賃助成―などを中間整理案に盛り込んだ。
  • 設備投資や関係機関との協議などを必要とする取り組みも多いが、一つ一つ、すぐにも推し進めるべき項目が並んでいる。
  • 人口減少は四国全体で進んでいる。国立社会保障・人口問題研究所によると、2015年に384万5千人だった4県の人口は、30年后の2045年には100万人以上少ない282万2千人に減ると予測されている。
  • この人口減は、1987年の民営化以来、鉄道事業の赤字が続くJR四国の苦しい経営状況に追い打ちをかけるのが必至だ。利用者増に向け、相当真剣に取り組まないと、廃線議論がいつ起こっても不思議でない。
  • JRの一層の経営努力はもちろん不可欠だが、公共交通の柱の一つとして、JRだけに任せていい問題ではない。行政も危機感と責任感を持って、利用促進につながる方策を打ち出すべきだ。
  • 懇談会では触れられなかったが、公的支援の在り方、とりわけ、地方自治体の負担の是非に関する議論は避けて通れない。
  • 不確定な新幹線に頼らざるを得ないほど、四国の鉄道網が置かれた環境は厳しい。廃線になれば、地域のダメージは大きいだけに、懇談会を中心に、新幹線以外の方策も早急に議論を深めたい。
  • 高令化と人口減少が進む地方における「住民の足」はどうあるべきか。鉄道でなく、バスによる交通網充実という選択肢もあり得るだろう。持続可能な最善策を打ち出すためにも、地域の将来展望をJR、行政、住民が連携して描き、共有することが何より重要である。
    (【社説】四国の鉄道網 - 新幹線だのみは現実的か|社説|徳島新聞|2019年10月29日(火)5:00)

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(さんこう)